【故郷を考える】ディズニーランド&シーから学ぶ地方創生

2014年第2次安倍改造内閣発足時の総理大臣記者会見で発表された「地方創生」。別名、ローカル・アベノミクス。

東京一極集中などによる地方の人口減少問題で消滅の危機が叫ばれる中、多方面から“地方創生”や“地方活性化”といった言葉をよく耳にするようになりました。

しかし、みなさんに地元が活性化されているという実感があるでしょうか。

ここでは、地方創生とはどういったもので、どのよう地方を活性化していくのかをわかりやすくご説明します。

さて、みなさんが旅行に行ったとき「ほぉ~ここの町は活気があるなー」と思う事があるかもしれませんが、地域が活性化していくには大枠で3つのポイントがあります。

・まち
・ひと
・しごと

詳細は割愛しますが、上記の3つがうまく作用してバランスを保ちながら循環していければ、より活気溢れる町へ成長し続けることができるのである。

東京ディズニーランド&シーから「地方創生」を学ぶ

ディズニーランド&シーには非日常的な「夢のような世界」を創造しまた追求し続けている。

これは「地方活性化の縮図」と言っていいほど、たくさんのヒントを得ることができる。

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シーのテーマは「冒険とイマジネーションの海へ」。そして、子供に媚びない大人向けのコンセプトとなっており、集客戦略は、以下の3つとなる。

・リピーターの確保
・中高年の客層を開拓
・地方の客を増やす

一方、地方創生の具体的な取り組みは、以下の4つとなる。

・地方において安定した雇用を創出する
・地方への人の流れをつくる
・若い世代のファミリープランを実現する
・地域と地域を連携させる

それでは、「まち・ひと・しごと」をポイントに東京ディズニーランド&シーを考察しながら、分かり易く極端な話をしていこう。

夢の国と思ってもらうために完璧な環境を整備すること

夢や魔法や冒険・イマジネーションの世界は完璧な環境づくりのもとに創造される。それには莫大なお金がかかります。

<以下はディズニーランド>

・バックヤードに全てまとめる
※車庫/衣裳倉庫/保全設備/管理棟/従業員施設など。

・大地下道(3本)で食材の運搬、移動
※32の直営レストランや地上へ通じている。

・ホテルは12階までと高さを制限
※夢の国からホテルが見えてはいけない。夢の国の果ては青空と森しか見えないはずだ。

・夢の国に絶対にあってはいけないゴミ
※そのために、600人のカストーリアルを使って15分に1度掃除をする。

これは、ディズニーだと「夢の国」を実現するための土台となる環境整備で、まさに「全てのゲストにハピネス(幸福・幸せ)を提供するための基盤作り」ということです。

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この基盤は、地方の行政や企業に置き換えると、「人が豊かに生活するための基盤」となる「交通、施設、通信」ということになります。

つまり、本当に住民が豊かになるための県づくりを妥協することなく徹底的に整備を行うことと、根拠を分かり易く住民に説明する環境作りが大切となってくる。

キャストはゲストとのコミュニケーションで感動を与えること

ウォルト・ディズニーは「人を最も感動させるのは、人と人とのコミュニケーションだ」と言っています。たしかに、さまざまな場面でのキャストとのやりとりが、最大の魅力だと思います。

例えば、朝でも夜でもゲストへの挨拶は「こんにちは」です。「いらっしゃいませ」だとゲストから返事がしにくく、ツーウェイコミニュケーションにならないからだそうです。

自動販売機がないのは、「夢の国」には相応しくないのも理由ですが、商品を渡す時が「hand to hand」のコミュニケーションのチャンスだからです。

その他に有名なのが、ほうきに水を付けてキャラクターの絵を道に描いてくれたり、誕生日シールを付けていたら、キャラクターやキャストが祝ってくれたりと様々なコミュニケーションショーが用意されています。

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またDisneyの方針として、ゲストは「一番大切なお客様」で、キャストは「家族の一員」として大切にされ、キャストの優先行動規準「Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)」などもあります。

ほかにも、ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)はイコールだという考えのもとアイデア制度や仲間同士であいてのよいところをみつけ、称え合う制度など様々なアプローチから人材育成も行っております。

このように、コミュニケーションの大切を分かっているこそ、機会や場を「あえて」創出し、互いに尊重しあえる環境や教育にも全力で力を注いでいるのがわかりますね。それにより、ディズニーで働いている人はみんな楽しそうで生き生きしており、来場者まで人生で一回は働いてみたいと思ってしまう人も多いのではないでしょうか。

今後、地方の行政や企業はいかにコミュニケーションの機会の創出と世代・業種・教育環境を超えた場の提供と人材育成とサポートが重要となってきますね。

常に雇用とFanを生み出す仕組み

実際に働くキャストの数は約18000人(2012年当時)

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だが、その反対に毎年約9000人が退職している。1年を通してこの約半分が入れ替わる計算となる。

働く人の9割がアルバイト採用で、募集は常に行い、最低限のマナーを守れる方であれば、夢の国で働けるチャンスをもらえるとのことだ。

数字だけ見ると、さすがの規模と循環を生み出していることが分かる。

また、東京ディズニーランドの来場者のリピート率を例にとると、2回以上来園している顧客は98%、10回以上は約60%、30回以上のヘビーユーザーの割合は約20%(12年前のオリエンタルランドの調査結果)となっている。

「だってディズニーじゃん。そりゃ働きたい人なんていっぱいいるでしょ!」「私も1回でいいから働いてみたい!」「年間パスが欲しい」って思ってしまうのはどういうことなのか!?

これは、Fanを生み出す「仕組み作り」を確立していること。

Disney映画のキャラクター、ストーリー、音楽からディズニーランドというリアル体験までの一連の流れで好きになってもらうことを指します。

アナ雪を例にすると「アナ雪のストーリーは姉妹の話にして、性格は○○にして、音楽はみんなが口ずさめて、子供たちも好きなメロディーにして、そしてディズニーランドに体験しに来てもらって、グッズを買って、ショーをみて感動してもらい、家族や恋人や友達の全世代を巻き込んで、もっと好きになってもらう」ことだ。

つまり、好きになるのは偶然ではなく、長い歴史のDisneyが作り上げた必然。。いや「魔法」と言うべきだろう。

このように、Fanや好きになって、また来てもらう仕組み作りを行う事が一番重要となってくる。

昨今、地方の行政が積極的にコンテンツを打ち出している。有名な成功例として「くまモン」だ。これは熊本県のしっかりとした戦略のもと、熊本県の認知度を向上させるためにご当地キャラをPRしているのはお分かりだろう。「ストーリー・キャラの形成」→「話題化」→「SNSの活用」→「メディアで露出」といったように地道な仕組みが裏にある。それが今やミッキーにも負けぬ人気者となったのは言わずとも知れており、地元への貢献度は想像をはるかに超えますね。

ここまで、「まち・ひと・しごと」の地域活性化に必要な3つのポイントをDisneyに例えて分かり易く簡単に話をしたが、2014年に「地方の人口減少に伴い、約900の自治体が近い将来消滅する可能性がある」という事で「地域創生」という言葉が生まれ、「まち・ひと・しごと創生本部」が同年9月に発足しています。

これだけ、地方の衰退化が国をあげて懸念されている状態なのだ。

今、「地域」という生態系の中にいる複数の企業や様々なプレーヤーが関わり合い、つなぎあい、ひとつになって共に創り上げ、循環しながら広く共存共栄し成長していく仕組みが重要視されています。

また、どんどん地方から都市部へ、人やお金が吸い上げられている構造をどうにか地方で循環もしくは還元できる仕組みを作ることが大切だ。

これからの地方は、横の連携を強化し、「お金の流れが地域の中で循環する仕組み作り」と「Fanを生み出す仕組み作り」を行うことが大切となってくるのではないだろうか。

少し長くなりましたが、極端な話で少しでも分かり易く、「地元」「故郷」のことを少しでも考えてみていただけたら嬉しいです。